福田首相退陣で思うこと
本日、「ついに」というべきか、福田首相が退陣を表明した。
実はこれに関して言いたいことが山ほどあるのだけれど、私が今回触れたいテーマがぼやけてしまうので、今日の記事においてはグッと我慢して口をつぐむことにする。
今回の退陣劇、「理由がわからない」などという寝ぼけた意見をよく耳にするが、首相の会見内容から大筋は明らかだ。
(1)ねじれ国会下で政局運営が困難
(2)福田首相の支持率低迷が、その困難さに拍車をかけている
これは誠にその通りで、最終的に退陣が正しい選択かどうかはさておき、他の誰かに変わることで(2)がいくらかでも解消されるのであれば、退陣を検討すること自体はやらなければならない作業であることは間違いない。
しかし、私がテーマにしたいのは退陣の是非ではない。
些事はさておいて、「ねじれ国会」時代に、日本の政局で何が起きているのか、その大まかな構造をはっきりさせて、そこから私たち国民が把握しうる事実は何であるのかをクッキリさせておくことが今回の記事の狙いだ。
短い記事にまとめるために、細かいことはザックリと切り捨てて要旨のみ書こう。
まず、福田政権のまともな評価など私には(そして多分殆どの国民にも)出来ないことを明言させていただきたい。
これは褒めているわけでも貶(けな)しているわけでもなく、「わからないとしか言い様がないはずだ」という見解だ。
私の目にハッキリ見えたのは、次の点のみだ。
(1)問題山積の日本で、政局を停滞させたのは民主党である
(2)(1)の結果、与党は政局をどちらにも転がすことが出来なかった
(3)報道は(1)について全く無批判であり、(2)の結果責任のみを与党に求める立場だ
この情況下で福田政権の総評をあえてするならば、「弱い」という「はなからわかっていること」しか言えないはずだというのが私の意見だ。
さて、上の(1)には実はそれなりの「正義」がある。
民主党の掲げる一大テーマは「二大政党制の実現」(その方向性には私も賛成だ)であり、そのためには兎にも角にも政権交代を実現しなければならない。
政権交代を成し遂げるための力学は簡単であり、「与党の支持を下げる」と「自党の支持を上げる」の2つしかない。
小沢民主党になって以来、民主党は徹底してこの前者、「与党の支持を下げる」ことのみに邁進している感が否めないと私は感じている。アンケート調査における、自民離れの割に民主支持が増えていない現状もそれを裏付けている気がする。
そもそも政策の合わぬ自由党を受け入れた事自体、政権交代のための力を得るためには何でもやってのける覚悟を示しているのだと思うし、とにかく政権交代を成し遂げることが正義であり、そのためにはどんなことでもやってやると腹をくくっているのが今の民主党のあり方だといえると思う。
それはある意味正しいのかもしれない。
確かに政局は混迷を究め、与党が無能極まりなく見えて、政権交代実現に一歩進んだのかもしれない。
しかし、「そのために何をしたか」について報道はあまりにも無批判だ。
民主党がねじれ国会を利用してやってのけた事を小学生にもわかる言葉ではっきり言っておきたい。
・与党政府に手柄を立てさせないように邪魔立てした
これだけだ。
「手柄」というと分かりづらいが、ようするに「国民生活の向上」のことであり、民主党はわずかでも与党・政府の評価が高くならないように、与党の国民生活を向上させるための政策をことごとく邪魔立てし続けたのだ。
実際にその政策が実現した際に、国民生活が向上したかどうかは分からない。私が福田政権の評価を「わからないとしか言えない」と言っているはそのためである。
しかし、私にはこの民主党の行為がいかに二大政党制実現のための方便であるとしても、許しがたいものに映る。
そもそも野党だからといって何なのだ。たしかに政権奪取は野党の大目的の一つではあるが、与党であろうと野党であろうと、国会議員の仕事は本質的に同じではないのか。
与党の掲げた法案に不備があるなら、ちゃぶ台返しをして政局を混迷させるのではなく、真剣に協力して、より完全な法案をともに策定するのが、与野党問わず国会議員の仕事なのではないか。
いまの民主党議員はその大切な仕事を放棄し、与党政権下で良い法案ができぬよう(手柄を立てさせぬよう)全力で邪魔しているだけではないか。
これを国民に対する裏切りと呼ばず、何を裏切りと呼ぶのか。
重ねて言う。
二大政党制の実現に異論はない。むしろ大いに賛成だ。その受け皿は現状ではやはり民主党だと思う。
しかし、政権交替という大目的のためには、国民生活までもを人質に取る民主党のあり方はいくらなんでも行き過ぎだと私は思う。
政権交替のための力学を再掲させていただく。
(1)与党の支持を下げる
(2)自党の支持を上げる
いまの民主党は、与党に得点を重ねさせぬよう邪魔立てして、些細な失点をとことんあげつらう作戦だ。
つまり上の(1)ばかりに力を注いでいる。
しかし、本当にそのあり方が正しいのか。
現在の国民生活を少しでも向上させるべく、政府与党に徹底協力する姿勢を貫くことにより、自党の支持を向上させる(2)の姿勢こそが、本当の意味で良識野党・責任野党のあるべき姿ではないのか。
それを貫いてこそ、政権交代の受け皿として国民の信任を得られるのではないか。
野党とはいえ参院を事実上支配しているのだ。
政局の責任を与党のみに押しつけるのは大いに卑怯であり、恥だ。
政局の混迷について、与党を非難する立場ではなく、与党とともに国民に詫びる立場にあるはずだ。
私はそもそも民主党に大きな期待をかけているものの一人だ。
現状を酷いと思いつつも、比例代表の投票用紙に民主党と書くかどうかギリギリまで悩むものの一人だ。
しかし、このままでは次回の選挙では一切悩まずに投票できてしまうかもしれない。
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コメント
この記事へのコメントは終了しました。
政治の事はあまりよく分からないですが、
はっきり分かる事は、国民の為に出来る事
をどうして議員全員で前向きに話せないのか?
という事です。
邪魔ばかりして、先に進ませないような
空気をずーっと感じてました。
考え方をガラっと変えて、積極的に
改革に参加する方が、よっぽど
「さすが、○○党!!」という評価に
繋がるのではないかと思うばかりです。
人の足を引っ張る事は、自分をもおとしめる
ことだと思います。
投稿: こつこ3 | 2008年9月 2日 (火) 23時28分
今晩は^^
んーー。
”こつこ3”さんと同じです!
何事もそうですが・・・
「和を以って貴しとなす」
せめて、
「和して同ぜず」
でしょうか。
生意気ですね(^^ゞ
投稿: やっちゃん | 2008年9月 2日 (火) 23時45分
こんばんはー。
同感ですね。国を、より良い方向に持ってゆくのが議員の責任であるなら、野党もきちんと責任を果たすべきでしょう。
どうも、この国の議員の質は、与野党含め、あまり上質というイメージがありませんね。
残念な事です。(≧ヘ≦)
投稿: ごんざえもん | 2008年9月 3日 (水) 17時46分
今回の福田氏の退陣劇はびっくりしたけど
テレビも臨時ニュースばっかりだったしね~
のんきんぐさんの言う事は何となく分かるよ~
って思うけど!
ともたん的な見解としては
今の政治は正しく以前ドラマでやっていた
「CHANGE」の世界って事だ!
派閥や党の対面や方針にとらわれて
真の目的意識から遠のいて
国民は鼻っから意識されてない!
もっと国民レベルで考える意識ある政治家は
いないのかよ~
福田氏が首相になって
決まって施行された事ってあったかな?
ただず~と同じ問題が先のばしのまま
ここまで来ちゃったって感じがするけど・・
これからもドンドン問題は先延ばしになるんだろうか?
先行き不安な感じだね
投稿: ともたん | 2008年9月 4日 (木) 13時51分
こっこ3はいつも一番伝えたいと思っている部分を的確に受け止めて、わかりやすい表現にして下さるのでとても嬉しいです!
ヽ(^o^)ノ
"せめて"とお書きになりましたが、「和して同ぜず」は「和」のありかたのいわば理想形ですよ。和の本質を最も尊ぶ態度が「和して同ぜず」です。
与野党のありかたで最も望ましい形がまさに「和して同ぜず」ですね。
逆に党内など、同じ器の中にいるもの同士の在り方として、最も忌むべきものは、「同じて和せず」だと思います。
ヽ(^o^)ノ
実は、ちょっと調べるだけでも、日本には熱心な良い政治家が沢山いることがわかります。
ただ、マスコミを通して政治を眺めるとどうしても悲観的にならざるを得ない情況にある点は、今の日本が抱える大問題だと私は考えています。
報道を見て悲観的になるのは良くわかりますが、多分、悪いのはむしろ報道のほうだと私は思います。
ヽ(^o^)ノ
『あまり政治に悲観的になるのはやめましょう』という提案をさせていただきたいです。
さっきも書いたけど、日本にも熱心な良い政治家は結構いるのですよ。
福田さんにしたところで、もう少し政治をしうるだけの基盤のあるタイミングで総理になれば、私たちの目にはっきりわかるレベルで様々な業績をあげられたかもしれない。
もちろん、トップに立つものは結果に責任を負うべきですが、実のところ「総理ごとき」がいかに頑張っても政治なんてできゃしないのですよ。
総理を支える与党が磐石でなければ、法案一つ通すことができない。
野党が本当の意味で健全でなければ、与党を正しく批判することもできない。
報道がより深い見識を持たなければ、政治の正しい姿を国民に伝えることもできない。
どれが欠けても健全な政治にはなりません。
そして、私たち国民も真剣に学び、フィルタリングされたいいかげんな報道の奥にある事実だけを見据えて投票行動をしなければならないわけです。
この情況の中で、「所詮誰がやっても」とか「日本の政治家なんて」とか、簡単に悲観的になるものには、政治をとやかく言う資格なんてあるのでしょうか。
その姿勢こそが、結局国を蝕む大本なのではないでしょうか。
その意味で、国民にそういった姿勢を徹底して叩き込もうとしているマスコミの在り方こそがいまの日本の禍根だと私は思っています。
政治不信に陥っておられる方は少なからずおられると思いますが、その殆どの方は非常に頼りない情報から政治不信に陥っています。
つまり「『実体』を知らずに勝手に不信がっているだけ」なのです。
実際何も変わらないじゃないかと仰るかもしれないですが、なぜ変わらないのかに目を向けるべきです。
ブログを通して、根拠のない悲観論を払拭できるよう頑張りたいなと思います。
ヽ(^o^)ノ
投稿: のんきんぐ | 2008年9月 4日 (木) 18時57分
こんにちは。
この手の問題は、なかなか取扱うのが難しい部類に入ります。まず、のんきんぐさんが、この話題に触れたことに勝手ながら感心させられます。
国会議員や政治という言葉に、多くの国民が反射的にネガティブな反応を示します。これは実に哀しいことであり、ふがいないことです。
アメリカなどの政治を我々の感覚から見れば、まるで新興宗教並みの激しさです。アメリカのような政治が優れているとは思いませんが、少なくとも政治に対する関心度はけた違いでしょう。国民は議員や国の政治に文句を言う前に、自分自身を見直すべきだと私は思います。だって、あの議員達を選出しているのは我々自身に他ならないのですから。
投稿: 影斬 | 2008年9月 5日 (金) 12時40分
福田氏思ったより辞任するの
早かったね。
今誰がなっても同じだとおもうね!
特別違ったことをやってくれる人じゃなきゃ
変わらないと思うね。
投稿: 8732 | 2008年9月 5日 (金) 14時02分
全く仰る通りですね。
私は報道のありように禍根があると考えていますが、それでもなお良く知りもしないで、ネガティブな感想を平気で公言する方々にも幼さ、情けなさを感じます。
小泉がどうの阿部がどうの福田がどうの、果ては「日本の政治家」がどうのと公言しておられる方達にどれだけの裏付けがあって、それを言っておられるのかうかがいたいものです。
本当に公正な評価をしてみようと考えて政治をみつめている方ならば、いかに私たちが何も知らされていないか、いかにワイドショーレベルの些事だけが「政治ネタ」として報道されているかわかるはずなんです。
『選挙に行っても何も変わらない』という馬鹿げたデマを国民に叩き込んでいるのは間違いなくマスコミ。
だからこそ、ブロガーはマスコミの色眼鏡を通さないそれぞれの立場で自由に政治を論じるべきだと思います。
一見、義憤にかられているかのような文面で、その実マスコミと同じ論旨のたわごとを、自由な立場にあるブロガーまでが喧伝するのは実に馬鹿げていますよね。
ヽ(^o^)ノ
誰がなっても同じでは絶対にないよー^^
ただ、サポート態勢の弱い現状では与党に政治らしい政治ができないのは事実でしょうね。
しかし、その責めは首相の人選ではなく、野党の『戦略』にあるところが残念なところだと思います。
戦略の犠牲になっている国民はたまらんよねー。
ヽ(^o^;)ノ
投稿: のんきんぐ | 2008年9月 6日 (土) 00時21分
のんきんぐさん
のんきんぐさんの言ってること、間違ってはいません。おんなじこと、思ってました。
福田総理がけっきょく何をしたかったのか・・・
私にはわからない悩みがあったかもしれないですけど、この国のTOPだったんですからね。
途中で投げ出すなんて、ありえません・・・
投稿: kiki | 2008年9月 9日 (火) 23時54分
国のトップが無責任なのはどうかとおもいますね。被害にあうのはいつも国民。。期待がもちたいです。
投稿: なお | 2008年9月10日 (水) 01時54分
私にはあれが投げ出しだったのか正しい選択だったのか判断できません。
その判断がつく方々が一体どのようなニュースソースを根拠にそのように判断なさるのかに非常に興味があります。
私には福田氏が無責任だったのかどうかも判断がつきません。
これも同じくどのようなニュースソースからそのように判断なさるのか非常に興味があります。
TVの報道は残念ながら完全にワイドショー化しており、ノイズばかりで大切なことは何一つ伝えてくれません。
しかも不勉強なキャスターの幼稚な意見(小学生でも同じことを言えるでしょう)ばかり聞かされてうんざりです^^;
新聞についても実のところTVと大差のない情況になりつつあります。
私がこの記事でもっとも伝えたいポイントは、「私達は政治を評価しうるだけの情報を持っていないのではないか」という疑問が一つと、その中にあって、それでも何か一つだけ言い切れることがあるとすれば、「少なくとも現時点で小沢民主党の在り方は国政の足枷になっている」という主張です。
現時点の民主党の姿勢は一貫しています。
とにかく国政を停滞・荒廃させて国民生活を圧迫することにより与党の評価を下げることにより、何としても政権交代を成し遂げ、二大政党制を成立させる方向性に邁進しています。
この方向性はあるいは百年先を見据えた場合には正しいのかもしれません。
ただ、事実そのようなことが行われていることを認識しないままに票を投じることには疑問を感じます。
しかし、どうもマスコミは国民を盲目のままにさせて、うやむやのうちにでも政権交代が行われるシナリオの後押しをしているように思えてなりません。
投稿: のんきんぐ | 2008年9月10日 (水) 03時05分
初めまして。エディタの足あとからやってきましたnobodyと申します。以後お見知り置きを。
さて、記事の内容、たいへん興味深く読ませていただきました。
私もツカサネット新聞というサイトに「福田首相退陣問題の本質」という記事を投稿したのですが、そこに、「問題の本質は自民党ではなく民主党の不甲斐なさにある」というようなことを書きました。
そこで十全に言及できなかった、その民主党の内実を見事に喝破されていて、胸のつかえがスーッと下りた感じがします。
ただ、4月にガソリンの暫定税率が切れたことだけは民主党に感謝してますが。
また政治等についてののんきんぐさんの見解を伺いに来たいと思います。
投稿: nobody | 2008年9月15日 (月) 02時04分
nobodyさん初めまして。
ツカサネットの記事を拝読いたしました。
僣越ながら、私の記事よりもより大きな構造の中で政治を捕らえた良い記事だと感じましたよ。
ガソリン暫定税率の件ですが、もう少し別な文脈で提示していればもっと民主党の株が上がったのではなかったかなどと思ったりもしています。
ツカサネットの方の記事に書いておられた通り、前原氏(なかなかの論客ですよね)・枝野氏・浜口氏の台頭が望まれるところですね。
ただ、岡田・前原氏が失脚同然に党首を退かざるを得なかったことも、実は案外小沢氏が糸を引いていたのではないかなどと私は勘繰ってますので、表向きは小沢氏が手柄を立てた形になっている以上、なかなかスンナリと事がすすまないような気もしています。
もっとも、政権奪取とともに小沢氏が引退表明するというシナリオもなくは無いようにも思ったりもするのですけどね。
小沢氏は、『豪腕を振るい泥をかぶれるだけかぶって、なりふり構わずに政権を奪取して後事を後進に託す』というような古いタイプの『男の美学』みたいなものに酔いそうなタイプにも思えるから。
まあ、それならそれで一つの在り方として美しいと言わざるを得ない面も事実あると思いますし。
なんだかまとまりのないことをグダグダと書いてしまいました。
ヽ(^o^;)ノ
関係ないですが、私は安吾、好きです^^
ブログの書評も一つ一つじっくり拝読させていただきますねー。
ヽ(^o^)ノ
投稿: のんきんぐ | 2008年9月15日 (月) 21時26分