風評被害(2)
前回風評被害を書いて以降、Twitterや「ことづて」で色々な方とお話しました。
殆どの方は同意のコメントを下さったのですが、中には本当に根の深い政府不信を抱いておられる方も見受けられました。
ただ、「根の深い」といっても何らかの事実に基づく不信感ではなく、不安から生じた様々な誤解が「根」になっていることが良く良くわかって来ました。
政府や科学者は嘘のない正確な表現をしなければならない立場にありますが、その「正確な表現」までもが不信の対象になってしまうことまであるようなのです。
例えば、3月20日にホウレンソウ等から食品衛生法上の暫定規制値を超える放射性物質が検出されたことを受けて、枝野官房長官は次のように発言しました。
「ただちに健康に影響を及ぼすとは考えられない」
これは極めて正確で誠実な発言であり、諸データから見ても文言通りに受け取って安心して良いのですが、不安を抱えた方が御覧になると、
「ただちに?ということは、そのうち何からの影響が出るってこと?」
というように、さらなる不安材料になってしまうようなのです。
さらには、
「将来何らかの問題が報告されたときに、『ただちには影響ない言っただけで、将来のことまで言っていない』と逃げるつもりに違いない」
などと、受け取る方もおられるようです。
しかし、そこには2つの間違いがあります。
1点目はテクニカルな間違いであり、責任ある立場の方が使う「正確な表現」を御存じないということです。
例えば、仮に世界で一番安全なホウレンソウについて、その健康に対する影響について発言することになったとしましても、枝野官房長官も科学者も「ただちに健康に影響を及ぼすとは考えられない」という程度の発言しか出来ないのです。
一般の方の日常会話感覚で言えば、「ぜぇぇぇぇぇっっっっっったいに大丈夫!!!!」とでも表現するような事態なのですが、責任ある立場ではそうは言えないことをまず理解する必要があると思います。
逆に、わずかでも健康を害することが予想される場合は、政府の会見も科学者のコメントも必ずそれとわかる表現になるのです。
2点目はメンタルな間違いといっても良いと思うのですが、つまるところ「不安」であることから冷静な判断ができていないことです。
例えば、今回のケースでホウレンソウが健康に影響を与えるものであった場合、官房長官にそれを隠す必然性など、あらゆる角度から全くないのです。もちろん、科学者も同じで正確な事態を隠蔽することで得をすることなど何一つありません。
そもそも、政府は国民の敵ではありません。ひょっとしたら無能かもしれないし、掲げる政策に致命的な欠陥があるかもしれません。
しかし、総理にしても官房長官にしても、国家国民のために激務をこなしておられることだけはほぼ誰の目にも明白ではないですか(繰り返しになりますが、有能であるか無能であるかについてはここでは言及していません)。
不安から、枯れ尾花も幽霊に見えてしまうのはわからなくもありません。
しかし、こんな時こそ、眼前の事実を事実のまま受け入れる冷静な目が必要だと私は思います。
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